EDITH PIAF
シャンソンの大歌手エディット・ピアフの生涯を描いた映画を、もう公開されて一月も経とうというのにやっと観ることができました。もっと早くにと思ってたのですが、どうせなら時代背景を頭に入れるために、タイミングよく出された蒲田耕二さんによる大著「聴かせてよ愛の歌を」を読んでからと思ったのが運の尽き。読了まで一月もかかってしまいました。
本書、480ページに及ぶ分厚い本ですが文字やレイアウトがゆったりと読みやすく構成され、シャンソンの歴史、日本で愛された100曲の詳細な解説に重要ミュージシャン20人のプロフィ−ルなどによって、わが国にはかなり歪んだかたちで受容されたシャンソンに、正確かつ新たな視点を与えてくれます。
とかカッコつけたこと言っちゃいましたが、実は本書に出てくるミュージシャンたちの多分1%も知らないレベル、基礎知識の無さを痛感した次第です。それでも何とか読破できたのは、著者の歯に衣着せない辛口の批評精神が痛快だから。なにせ賞賛されたミュージシャンよりも、クズだの最低だのと名指しで批判されたそれのほうがはるかに多い。ヘソ曲がりの自分としては、そんな文章スタイルがツボだっだりして、理解はできずとも感心はできるみたいな感じでした。
本書には著者おすすめの名演を集めた素晴らしい音質のCDが付いていて、シャンソンの歴史を実際の音でも辿れる粋な配慮がなされてますが、こうなればクズとか最低と指摘された音源もぜひ聴いてみたいところ。きっとこの本を倍楽しめるのでは(笑)。
未知の音楽大国フランスへと誘う、著者の気迫と気骨に満ち満ちた労作です。
で映画ですが、もう最高に感動してしまいました。観る前には、もしかして気色の悪い一部のシャンソン・ファン向けに変に美化された内容だったらイヤだなと少し心配だったものの、まったくの杞憂に終わりました。例によって映画的な評価を下す素養はありませんが、美しい映像、初期から晩年までを時系列的に細かく割って複雑に行き来するスリリングな構成、そしてライヴ感溢れるステージ・シーンなどによって、この大歌手の光のみならず影の部分をも含む実像を、みごとに浮き彫りにしています。
エディット・ピアフ、その栄光と挫折の生涯はジョー・ストラマー同様、いやたぶんそれ以上にパンクなもの。ゆえに、いわゆるシャンソン・ファン以外が観てこそ面白い映画だと思いました。
帰りに思わず買っちゃった、例のドキュメント廉価版10枚組「エディット・ピアフ」(笑)。映画のあとでは全然違って聴こえてくるから不思議なものです。 恐るべし、海老ピラフ!何のこっちゃ。
October 25, 2007 07:38 PM
JOSS STONE
ちょっと前からFMでさかんに流されているジョス・ストーンの、ナット・キング・コールでお馴染みのスタンダード・カヴァー「L-O-V-E]。一聴、歌に寄り添ってダンスしてるかのようなイカしたベースが頭から離れず、早速同曲がフィーチャーされた新作2枚組をゲット。
新作とはいっても正確には春に出た3rdアルバム「イントロデューシング」まるまる1枚に、「L-O-V-E]はじめ9曲入りのボーナスCDが付いた、いわゆる抱き合わせモノ。この「イントロデューシング」、オリジナル以外にもジャケ違いで3曲多いものとか、エンハンストCDくっ付けて2枚組にしたものとか、今回のものとか、いったい何回商売すんの?って感じです。ソウル界の「赤福」か。
しかもボーナスCDには、これも夏前に出たアンジェリック・キジョの新作からストーンズ・カヴァー「ギミー・シェルター」を、一緒に歌いましたってだけで収録という、なんとなく「タマ狙え!」級の反則技も・・・。ソウル界の亀田一家か。
とまぁ、いろいろ文句も言ってますが、そんなことどうでもいいくらいにこのボーナスCDにはハマっちゃいました。とりわけ5曲収録された最近のライヴ音源が最高です。弱冠二十歳、わずか3枚のアルバムで確立した、貫禄すら漂う孤高のソウル・スピリット。まったくもって信じられません。普段何食ってんのかなぁ(笑)。
ついでに、最近のお気に入りがエイミー・ワインハウスの「BACK TO BLACK」。このひとももうすっかりブレイクしてるようですが、酒、タバコ、クスリそしてエッチの感覚漂う場末的雰囲気が堪りません。R&B色が強いこの2ndもいいですが、2年前のデヴュー・アルバムのほうがジャズ的な要素がうまく加味されてて、好みかな。このひとも弱冠24歳だそうで、どっちかというと、音楽のまえにお体大切に(笑)って感じです。
秋もたけなわすっかり朝晩冷え込んでまいりましたが、「この熱い魂を伝えたいんや」とばかりに暇な店でオヤジがひとり頭から湯気出して空回りしてますので、ぜひ見物にいらしてください。
October 22, 2007 07:10 PM
FATS DOMINO
前回の「MAGIC」と同時に入手したもののボスの眼力に気おされて後回しになっちゃいましたが、ニュー・オーリンズのメタボ・キング、ファッツ・ドミノへの愛情溢れる素晴らしいコンピレーション「GOIN’ HOME」がリリースされました。二枚組全30曲、うち16曲がこのアルバムのための新録音。
まぁとにかく参加ミュージシャンが凄い!ジョン・レノンに始まってウォルター・ウルフマン・ワシントン(十数年前青山スパイラルでの渋いステージを思い出しました)で終わる、まさに怒涛のニューオーリンズ・クラシックスのオン・パレード。メンバー全部挙げると10行ほどカタカナだらけになっちゃいますので止めときますが、個人的なベスト・トラックはタジ・マハール、トゥーツ・アンド・ザ・メイタルズ、ランディ・ニューマンにロス・ロボスあたりかな。レニー・クラヴィッツやハービー・ハンコックのファンク系もカッコいいし、マーク・ブルサールやアーマ・トーマスなどのソウル系もいい味出してます。逆に、ファンには怒られそうですがどうもミス・マッチ感を覚えるのがニール・ヤング、ウィリー・ネルソンあたり。
とは言っても全体的にはかなりハイ・レベルな演奏が目白押し。一本ピシっと筋の通った、ニュー・オーリンズ音楽ファンなら絶対に楽しめる傑作トリビュート・アルバムだと思います。ほんとこれだけのメンツを纏め上げたビル・テイラーというプロデューサー、アンタはエライ!
なおこのCDはティピティーナ・ファウンデーションの、カトリーナで甚大な被害を被ったLower 9th Ward地区の復興に対するベネフィット・アルバムとなっています。買って楽しんで、そして微力ながらも復興に寄与できる。いい話だと思います。
そして時を同じくしてブルース・インターアクションズから究極のガイド本、その名もズバリ「ニューオーリンズ・ミュージック・ガイド・ブック」が刊行されました(目下タワー・レコードのみで先行発売中、一般発売は19日)。一昨日入手につきまだ斜め読みの状態ですが、こちらも凄い!たぶんこれ一冊あればニューオーリンズ系は一生大丈夫でしょう(笑)。音楽評論界のミスター・ニューオーリンズ、文屋 章さんの監修のもと総論、各論、700枚ものディスク・レヴューなどで構成された、世界最高の音楽都市ニュー・オーリンズの一大音楽絵巻。
彼の地の音楽への溢れんばかりの愛情表現はむしろ押さえ気味に、あくまでもガイドに徹した粋でクールな姿勢が感じられて、まるでジョージ・ポーター・ジュニアのような骨太のグルーヴを感じさせる一冊。イギリスでの受容のされ方とか、ジャマイカとの関係とかを簡潔にまとめたピリっとスパイスの効いたコラムも随所に散りばめられ、ガンボ風味も満点です。
以上、今更ながらにニュー・オーリンズ音楽の広さと深さに眩暈いがする思いの、秋の夜です。人吉のベアーズ・カフェにガンボ食べに行きたくなっちゃったし(笑)。
October 13, 2007 07:39 PM
BRUCE SPRINGSTEEN
いよいよ噂の新作「MAGIC」の登場です。まず先行シングル「RADIO NOWHERE」がネット配信され、アナログ盤に続いてCDのリリースという、したたかな戦略を感じさせるパターン。ワールド・ツアーに向けてヤル気満々といったところでしょうか。「もちろん買うよな、オマエ!」って感じで薄目で睨み付けてるジャケット、怖くて通り過ごせませんでした(笑)。絵になるおっさんだなぁと、つくづく思います。
さて内容はというと、もう先行のロック・アンセム「RADIO NOWHERE」の勢いそのままに全編スプリングスティーン印満載の、噂に違わぬ傑作アルバム。明日無き暴走だったはずが、我慢できずまた暴走しちゃいました、ってノリで、E・ストリート・バンドの音圧満点の演奏をバックに、時に力強く時に切なく、その持てるロック魂を縦横に炸裂させています。これが15作目とのことですが、今や世界中のスタジアム・クラスを即ソールド・アウトさせる巨大なロック・アイコン。まさにアメリカン・ロックの王道です。
ここ3作品でプロデュースを努めるブレンダン・オブライエンはこの作品について、ビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」やディランの「ブロンド・オン・ブロンド」やストーンズの「メインストリートのならず者」に近い雰囲気がある、みたいなコメントをしていて、確かにそんな感じがありなかなかウマいこと言うなぁと一瞬感心したのですが、待てよ、アンタがそういう風にプロデュースしたんじゃないの?そりゃそうなるわ(笑)。まあそのお陰で、より深く楽しめるアルバムになって、なによりでした。
くどいようですがほんとに素晴らしい作品だと思います。が、ひとつだけ不満があるとすれば、その音のことです。店の再生装置の問題も多々あるのでしょうが、どうしても音圧高めのためか音が団子状態で聴こえてきて、ヴォーカルが埋もれ気味に感じてしまうのです。実はこの点は以前の作品にも感じていたことで(特にE・ストリートとのもの)、でもまぁそれが個性というか味ってものなのかもしれませんが・・・。もしかして、スタジアムで聴いたらこんな感じになるよってことを予めシミュレートして音作りしてるのでは?などと有らぬ想像までしてしまいました。試しに酒瓶が震えるくらいにヴォリューム上げて聴いてみたのですが、もう気分はスタジアムど真ん中、音の団子感がいかにもで臨場感満点でした。一万円得しました(笑)。
来年あたり来日あるのでしょうか?もし実現したら絶対に行きます!という方から土産話聞くのを楽しみにしています。って、こんだけ持ち上げといて、オマエ行かんのか!はい、ちょっと腰が・・・・・・。
October 3, 2007 08:32 PM